夫を愛しているから、他の男に抱かれたくないのだろうか?・・・リーディング時代小説「茶々ってば」⑪:神戸御影ヒーリングサロン 心星 POLARIS(ポラリス)

夫を愛しているから、他の男に抱かれたくないのだろうか?・・・リーディング時代小説「茶々ってば」⑪

2018.05.12

 

 

したたかに生き、本当に望むものを自分に与えよ・・・リーディング時代小説「茶々ってば」①~⑩

 

 

天正17年9月13日、わたしは鶴丸と共に大阪城に入城した。

 

秀吉は、すでに鶴丸を自分の後継者に決めていた。

そのため山城淀城から大阪城まで、豊臣の権勢を誇るよう絢爛豪華な大行列が従った。

鶴丸を抱いたわたしは鶴丸を乳母に預け、華やかな輿から降り大阪城へと足を踏み入れた。

秀吉は上機嫌で、わたし達を迎えに来た。

 

「おお、鶴丸、ようやく来たか!!

ほれ、ほれ!!」

と乳母から鶴丸を奪い、抱っこした。

その様子を、妻の寧々が静かに見ていた。

 

寧々に会うのは、これが初めてではない。

伯父上が生きていた頃に、寧々に初めて会った。

華やかさはないが、凛とした芯の強い女性だと感じた。

正直、よく秀吉の妻になったな、と思った。

 

次に会ったのは、わたし達姉妹が北ノ庄城を出て秀吉に保護されていた時だ。

寧々も、わたし達の元によく顔を見せた。

なにくれなく世話をしてくれたが、心からの笑みは見たことがなかった。

この時から、彼女は夫がわたしに惹かれているのを知っていて警戒していたのかもしれない。

わたしが鶴丸を産んだことを知って、寧々はどんな気持ちだったろう?

 

寧々に対して、素直に思った。

もし秀吉を本当に愛しているなら、どんな手段を使っても彼が望むものをあげたらよかったのに。

この人は、秀吉のことを本当に愛しているのだろうか?

それとも、夫を愛しているから、他の男に抱かれたくないのだろうか?

 

わたしは秀吉に男としての愛は、ない。

わたしに鶴丸の母として、最高位の権力と地位を与えてくれることに対しては感謝する。

だが、それは当然。

彼が欲しいものを、わたしは与えたのだから。

その対価として、揺るぎない地位を受け取る。

それが愛、というのなら愛なのだろう。

 

寧々はすでに、天正十三年に秀吉が関白になると同時に、関白の正室を意味する北政所の称号を得ていた。

そして前年、朝廷から情女性の最高位の従一位を授かっていた。

どこを取っても、揺るぎがない天下の関白の正室だ。

 

この大阪城には、秀吉の他の側室たちも多く住み、それらの取りまとめも寧々がしているそうだ。

あの秀吉の女好きにも嫉妬せず、たくさんの養子を育て手なずけた賢い女・・・

そして秀吉の妹、旭を家康の妻にすることを提案した政治のわかる危険な女・・・

この女には、気をつけねばならない。

 

秀吉は鶴丸を寧々に見せた。

「ほれ、これが豊臣の跡継ぎの鶴丸じゃ。」

秀吉が鶴丸を寧々に抱かせようとしている!

 

そこに大蔵卿局が、さっと秀吉の手元から鶴丸を奪った。

「関白様、そろそろ鶴丸君はお乳の時間でございます。」

「おお、そうじゃったか!

鶴丸、お腹がすいたか。

さぁ、たんと乳を飲んでこい。」

秀吉は何も疑わず、寧々に向けていた身体を大蔵卿局に向け、鶴丸を預けた。

 

よくやった、大蔵卿局!

心の中で拍手喝さいした時、この目で見た。

寧々は、鶴丸を抱こうと手をさし出そうともしていなかった。

 

やはり、この女は鶴丸のことなど、何とも思っていない。

あの微笑みの裏側にある冷たいものを感じ、背筋が震えた。

それでも、わたしはこの大阪城で生きていくのだ。

 

大阪城で、秀吉は鶴丸を目に入れても痛くないほど大切に可愛がった。

と同時にわたしのことも、以前にもましてみなに丁重に扱うよう申し付けてくれた。

だが、わたしはどうにもこの大阪城は居づらかった。

他の側室たちは寧々に従い、一緒にお茶を飲んだりしていたが、わたしには解せない。

 

どうして、豊臣の跡取りの生母が寧々に頭を下げなければならないのだ?

そもそも、寧々は伯父上の部下の妻だった女ではないか。

秀吉には、仕方ない。

が、寧々にまでおべっかを使ったり、頭を下げたりはしたくない。

 

わたしは秀吉にねだった。

 

「この大阪城は、窮屈です。

ここには、寧々様も始め他の側室たちもたくさんいます。

あなたが、わたしのところに足しげく通えば、他の者たちの機嫌は良くないわ。

北政所さまも、いい気分はしませんわ。

どこか、他の城に移りたいわ。」

 

「他の城、と言ってもなぁ。

せっかくここで、お前や鶴丸と一緒に暮らせるようになって、わしはすごくうれしいんじゃが・・・」

 

「それは、男と女のちがいですわ。

女にはいろんな事情がありますのよ。

一人の女が特別扱いされるのを近くで見ることは、よくありませんの。

それに・・・」

 

「それに?」

 

「もしそんな女たちの嫉妬が、鶴丸に恨みの念となって向けられたら・・・

鶴丸がどうなるか、と思うとわたしは夜も怖くて眠れませんの・・・」

そう言って、泣くふりをした。

 

鶴丸の名を出すと、秀吉は慌てて

 

「わかった、わかった、茶々!

鶴丸に何かあっては、かなわん。

今すぐはどうにもできぬが、必ず何とかするから、待っておれ!」

 

そう言うと、足早に部屋を出て行った。

 

 

鶴丸を恨む念は、たしかにあるだろう。

鶴丸が、本当にわたしと秀吉の子供なのか、という噂も他の側室たちから出ている。

 

それを耳にするたび

「なら、あなたもすればよかったじゃない?」

と思う。

 

どれほどの覚悟をして、わたしが鶴丸を手にしたと思っているのか?

覚悟がないくせに、できもしないのに、陰口だけたたいている女たち

一生を飼い殺しにされる生き方を選んだのは、自分自身だと気づかないのか?

命をかけて腹をくくることもできぬくせに、口を出すな!

 

こう思うわたしの中に、確かに伯父信長と母お市の血が強く流れているのだろう。

そして、わたしはそれを誇りに思う。

 

部屋を出て行った秀吉に、抱かれなくてよかった、と安堵した。

 

秀吉は鶴丸を出産後、しばらくして以前ほどではないがまたわたしを抱きに来た。

だが、あの治長との快感を知ってしまったら、秀吉との閨は単調でつまらない。

中途半端に身体を燃やされるだけだった。

じんじんうずく身体から熱が引くのを、一人で待つのはとても虚しい。

 

だが、この大阪城にはたくさんの目がある。

今以上に、心を引き締めなくてはならない。

 

天正18年の正月は、大阪城で迎えた。

北政所やわたし、側室たちをズラリと並べ、鶴丸を手に秀吉はご機嫌だった。

わたしは寧々はともかく、なぜ他の側室たちと肩を並べなければならないのか解せず、不機嫌だった。

だから、早々に退出してやり、部屋でくつろいでいた。

 

そんなわたしの様子を見かね、わたし達をどこかに移すことを寧々が秀吉に進言したらしい。

たぶん、寧々も鶴丸を目にしたくなかったのだろう。

 

この年の2月、わたしと鶴丸は大阪城を出て京に戻った。

そして、聚楽第に入った。

 

やっとわたしは、色んな目から解放され、息を吸いやすくなった。

 

 

鶴丸、ここで母と一緒に過ごしましょう。

 

大丈夫、ここに名乗れぬ父も一緒にいる。

あなたを守っている。

 

そう心の中で呟きながら、鶴丸を抱きしめた。

 

 

 

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あなたは何かをしようとした時、それを受け取る覚悟をしていますか?

 

腹をくくれますか?

 

口では、何とでも言えます。

 

人のことも、何とでも言えます。

 

 

あなたに思い、どれだけ本気ですか?

 

それを問えるのは、自分にだけです。

 

 

したたかに生きる

 

美開女(Be.Akujo)への二歩目。

 

 

 

 

 

 


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