彼女は、女としてのエクスタシーを知らないのか?・・・リーディング時代小説「茶々ってば」⑫:神戸御影ヒーリングサロン 心星 POLARIS(ポラリス)

彼女は、女としてのエクスタシーを知らないのか?・・・リーディング時代小説「茶々ってば」⑫

2018.05.14

 

 

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この年、わたしは何者かの念に押されるように、慌ただしく住いを移った。

 

秀吉が天下統一する上で、残ったのは関東と東北だった。

秀吉は関東の北条氏や、諸大名達に臣従するように促したが、北条氏政・氏直親子は従わなかった。

彼らと戦うため、春に小田原征伐に出陣した。

 

その際、わたしと鶴丸は大阪城に帰るように言われ、聚楽第から大阪城へ移った。

秀吉のいない大阪城を采配するのは、北政所である寧々だ。

このたびは、大人しく寧々に従い、彼女を観察した。

 

寧々は下級武士の娘で、秀吉とお互い好きあったもの同士で一緒になったそうだ。

なんということ!

政略結婚が当たり前の我らには、ありえない。

まるで動物ではないか!

雄と雌がむつみ合うようなものではないか!

なんと、下品な。

 

最初にこの話を聞いた時は、開いた口がふさがらなかった。

が、その反面、この夫婦の結びつきの強さも感じた。

だからこそ柴田の父を倒し、下級武士から下剋上を成しえて、天下統一への駒を進めたのだろう。

秀吉と寧々は、二人で一人なのだ。

わたしと治長が決して表に出せない秘密を共有したように、彼らも同じものを乗り越えここまで来たのだ。

 

だからこそ寧々は誰に対してもわけへだてをせず、平等に接した。

そんなことはわたしにはできないし、誰もわたしには求めていない。

わかっている。

秀吉は、寧々に母のような包容力を求め、わたしに女を求めた。

ということは・・・

秀吉は、もう寧々を女としてみていない、ということだ。

彼女を抱いていない、ということだ。

 

だから、彼女は忙しく自分に仕事を与えなければならないのか。

そう思うと

「これくらい、従ってやらねばな。」

と大人しくしていた。

 

あの秀吉との閨だけなら彼女は、女としてのエクスタシーを知らないのか?

あるいはもしかしてあれで、エクスタシーを感じたのか?

どちらにしろ、お気の毒に・・・

と思うと、女として優越感に浸れた。

 

そう思いながら大阪城で過ごすと、退屈はしなかった。

 

ある日、寧々がわたしを訪ねてきた。

 

「淀殿、お願いがございます。

秀吉から手紙がまいりました。

急ぎ、小田原城に向かってくれませんか?」

 

「なんでしょう?いきなり」

 

わたしは面食らった。

 

「小田原城は、長期戦になるようです。

そこで、秀吉はさみしくてあなたにそばにいて欲しいそうです。

秀吉の手紙には、こう書いてありました。

 

ーお前の次にすきな淀を、ここに呼んで欲しいーと。

 

淀殿、急ぎ小田原までお願いいたします。」

 

そう、にこやかにいうから驚いた。

普通、言うかしら?そこまで。

だけど、この面の皮の厚さが秀吉と本当にお似合い。

似たもの夫婦ね。

 

でもちょっと待って。

わたしが行くのはいいけど、鶴丸はどうなるの?

 

「北政所様、わたくしは小田原城までいくのは構いませんが、鶴丸はどうなるのでしょうか?」

 

寧々はニッコリ笑って言った。

 

「鶴丸君は、わたくしが面倒見ています。

どうぞ、何もご心配せず安心して秀吉のところに行って下さいな。」

 

やられた!

寧々は、鶴丸をわたしと引き離したかったのだ!

幼い我が子と離れる母親の気持ちがわからぬのか?

ああ、わかるわけなどないのだ。

母親になっておらぬのだから。

だから、こんなことを平気で言えるのだ。

 

でも、わたしはこの命令に逆らえない・・・

わたしは下を向き、鶴丸と離れる寂しさを思い、唇を噛みしめていた。

 

すると寧々はわたしの気持ちを打ち切るように、高らかに言い放った。

「大丈夫です。

鶴丸君の乳母もおります。

あんな離れた戦場に連れて行くよりも、安心安全な大阪城に居る方が、鶴丸君もすくすく育ちます。

さっ、早く仕度を!」

と言うと、まるでわたしを追い払うように、家来を呼びわたしの旅支度を始めさせた。

 

その時、わたしは寧々の本心を見た。

自分が一番秀吉に愛されているから、わたしを危険な場所に行かせないのよ。

わたしの代わりは、誰もいないの。

わたしが№1なの。

あなたはもう跡継ぎを生んだから、役目は終わったのよ。

戦場で何かあっても、あなたの代わりはいくらでもいるのよ。

と。

 

そしてわたしが大阪城を旅立つ日、寧々が鶴丸を抱いてわたしを見送った。

なんという屈辱!

わたしは怒りで身体が震え、鶴丸と離れる寂しさと悲しさで一人輿に揺られながら、涙を流した。

 

そんな気持ちで到着した小田原だったので、まったく気持ちが乗らなかった。

あまりにわたしがふてくされた顔をしているので、秀吉はおずおずと

 

「怒っているのか?茶々?

ここにいるのが嫌なら、帰ってよいぞ・・・」

 

と言い出した。

 

「ええ、鶴丸が心配ですから、帰らせていただきます。」

 

そう告げると、わたしはとっとと小田原から離れた。

 

そして大阪城に帰らずそのままわたしの城、淀城に帰った。

すぐに大阪城に、大蔵卿局を遣わせ鶴丸も連れ帰った。

少し離れていただけだが、鶴丸を抱きしめるとそのあたたかさと愛らしさに

 

「離れていて、ごめんなさいね。」

 

と、声に出して泣いた。

 

鶴丸は、わたしの命だった。

が、その鶴丸は淀城に着きしばらくして、病に倒れた。

 

もしや、寧々が鶴丸と一緒にいる間に、何か毒でも盛られたのでは?!

 

 

わたしの中に、どす黒い疑念が湧いた。

 

 

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あなたは自分の中で、いつも自分が一番でいますか?

 

自分以外の誰かを、自分の中で一番にしていませんか?

 

例え、子どもでも親でもパートナーでも

 

あなたの中で一番にしてはいけません。

 

 

あなたの一番は、あなた自身です。

 

それをしっかり思い出して下さいね。

 

 

 

したたかに生きる

 

美開女(Be.Akujo)への二歩目。

 

 

 

 

 

 

 

 



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